続・教員・公務員のための「人生100年・第二の人生を豊かにする10話シリーズ」

「遺産」ではなく「想い」を残したい
「先生、私は子どもたちに、お金ではなく、想いを残したいんです」
75歳の佐藤先生(仮名)は、そう言って微笑みました。
佐藤先生には、3人の子どもがいます。それぞれが独立し、経済的にも安定しています。
「だから、私の資産を相続で渡すより、生きているうちに、意味のある形で使いたい」
そして、佐藤先生が選んだのは、**「託す」**という生き方でした。
「残す」と「託す」の違い
多くの方が、「相続」を考えます。
でも、それは**「残す」**という発想です。
自分が亡くなった後、資産が子どもに渡る。
それも一つの選択肢です。
でも、**「託す」**は違います。
「託す」とは、生きているうちに、自分の想いとともに、資産を次世代や社会に渡すこと。
その違いは、大きいのです。
「残す」場合
・自分の死後、資産が分配される
・自分の想いは伝わらないかもしれない
・子どもたちがどう使うかは、わからない
・相続税が発生する可能性がある
「託す」場合
・生きているうちに、想いとともに渡せる
・使い道を見届けられる
・感謝の言葉を直接聞ける
・贈与税の非課税枠を活用できる
どちらが、人生を豊かにするでしょうか?
佐藤先生の「託す」実践例

佐藤先生は、3,000万円の資産をこう配分しました。
①孫への教育資金贈与:600万円
3人の孫に、それぞれ200万円ずつ。
教育資金の一括贈与には、1,500万円まで非課税という制度があります。
佐藤先生は、この制度を活用しました。
「おじいちゃん、ありがとう! これで、海外留学ができる!」
孫の笑顔を見て、佐藤先生は涙しました。
「お金を渡すことより、孫の夢を応援できることが、こんなに嬉しいなんて」
②母校への寄付:500万円
佐藤先生が教員として働いた母校に、図書室の蔵書購入費として500万円を寄付しました。
図書室には、「佐藤文庫」というプレートが掲げられました。
「これで、何百人もの子どもたちが、本を読んでくれる。私の想いが、ずっと残る」
③地域のNPOへの継続寄付:年50万円×10年
地域で子ども食堂を運営するNPOに、毎年50万円ずつ、10年間寄付することを約束しました。
「困っている子どもたちの役に立てる。これ以上の幸せはありません」
④子どもたちへの生前贈与:年110万円×3人×5年
子どもたち3人に、毎年110万円ずつ、5年間贈与することにしました。
年110万円までは、贈与税が非課税だからです。
「相続で一度に渡すより、少しずつ渡して、どう使うか見守りたい」
⑤自分たちの楽しみ:年100万円×10年
残りの1,000万円は、夫婦で旅行・趣味・健康に使うことにしました。
「まず、自分たちが楽しまないとね」
「託す」ことで得られる3つの幸せ
佐藤先生は、こう語りました。
「『託す』ことで、3つの幸せを感じています」
幸せ①:感謝の言葉を直接聞ける
「死んでから『ありがとう』と言われても、聞こえません。でも、生きているうちに『ありがとう』と言われると、こんなに嬉しいものなんですね」
幸せ②:使い道を見届けられる
「孫が留学する姿、母校の図書室に本が並ぶ様子、NPOの子どもたちが笑顔でご飯を食べる姿。すべて、この目で見られる。これが、何よりの喜びです」
幸せ③:生き方を次世代に伝えられる
「お金を渡すだけじゃない。『人のために使うことが大切だ』という私の価値観も、一緒に伝えられる。これが、本当の相続だと思います」
「託す」ための3つの方法

では、どうすれば「託す」ことができるのか?
3つの方法をご紹介します。
方法①:贈与 ─ 家族への想いを形に
【教育資金の一括贈与】
孫の教育資金として、1,500万円まで非課税で贈与できます。
【暦年贈与】
年110万円までは、贈与税がかかりません。毎年コツコツ渡せます。
【住宅取得資金の贈与】
子どもが家を建てるときの資金として、一定額まで非課税で贈与できます。
方法②:寄付 ─ 社会への恩返し
【認定NPO・公益法人への寄付】
所得控除の対象になり、税制上のメリットがあります。
【ふるさと納税】
自分の故郷や応援したい自治体に寄付できます。
【大学・母校への寄付】
教育機関への寄付は、将来への投資です。
方法③:教育支援 ─ 次世代の夢を応援
【奨学金の創設】
地域の子どもたちのために、奨学金制度を作ることもできます。
【家族への学びの支援】
孫の習い事、語学学校、資格取得費用など、学びに投資します。
「託す」ときの注意点
ただし、「託す」ときには、注意も必要です。
注意①:自分の生活を削ってまで渡さない
贈与や寄付は、自分の生活が安定していることが前提です。
まずは、生活防衛資金と運用資金を確保してから。
注意②:家族間の公平性を考える
複数の子どもがいる場合、贈与額に差をつけると、後々揉める原因になります。
公平に、または事前に説明を。
注意③:税制を理解する
贈与税・相続税のルールは複雑です。
IFAや税理士に相談して、最適な方法を選びましょう。
資産を「託す」=生き方を次世代に継ぐ
佐藤先生は、こう締めくくりました。
「私が子どもたちや社会に託しているのは、お金だけじゃないんです。『人のために生きることが、幸せだ』という、私の生き方そのものなんです」
これこそが、「託す」の本質です。
資産を残すのではなく、想いを託す。
お金を死蔵するのではなく、生きたお金として循環させる。
これが、人生後半の最も美しい生き方なのです。

最終話予告:「あなたの人生は、まだ”途中”です」
次回、第10話(最終話)では、**「あなたの人生は、まだ”途中”です」**をテーマにお話しします。
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次回予告(最終話)
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