第6話「”幸せのKPI”を持つ ─ お金以外の指標で生きる」

続・教員・公務員のための「人生100年・第二の人生を豊かにする10話シリーズ」

5,000万円あっても幸せではなかった人

「先生、私には5,000万円の資産があります。でも、幸せじゃないんです」

70歳の山田先生(仮名)は、そう言って俯きました。

退職金・年金・資産運用で、5,000万円以上の資産を築いた方です。

お金の心配はない。健康も問題ない。

でも、**「何のために生きているのか、わからない」**と言うのです。

「毎日、株価をチェックして、資産が増えた減ったと一喜一憂して。それだけの人生なんです」

お金は、幸せの「手段」であって「目的」ではない

私たちは、つい忘れてしまいます。

お金は、幸せになるための道具であって、お金そのものが幸せではないということを。

山田先生は、資産を増やすことが目的になっていました。

でも、**「何のために増やすのか」**を見失っていたのです。

私は尋ねました。

「山田さん、今月、笑顔になったことは何回ありますか?」

山田先生は、答えられませんでした。

「今月、誰かに感謝したことは?」

また、沈黙。

「今月、何か新しいことに挑戦しましたか?」

山田先生は、静かに首を横に振りました。

「先生…私は、何も測っていなかったんですね、お金以外のことを」

「幸せのKPI」という新しい指標

KPI(Key Performance Indicator)とは、重要業績評価指標のことです。

企業では、売上・利益・顧客数などのKPIを設定し、経営状態を測ります。

では、人生のKPIは何でしょうか?

多くの方が、「資産額」をKPIにしています。

でも、それだけでは不十分です。

私が提案するのは、4つの幸せのKPIです。

①笑顔:今月、何回心から笑いましたか?

笑顔は、幸福度の最もわかりやすい指標です。

1日1回? 週に1回? それとも、1ヶ月に1回?

自分の「笑顔頻度」を意識するだけで、生き方が変わります。

②健康:体と心は、元気ですか?

資産がいくらあっても、健康でなければ意味がありません。

「今月、運動は何回しましたか?」
「ぐっすり眠れていますか?」
「心が穏やかですか?」

これを、毎月チェックします。

③感謝:誰かに「ありがとう」と言いましたか?

感謝の気持ちを持つことは、幸福度を高めます。

「今月、誰に感謝しましたか?」
「誰かから感謝されましたか?」

これを記録するだけで、人間関係が豊かになります。

④挑戦:何か新しいことを始めましたか?

人は、成長することで生きがいを感じます。

「新しい趣味」「新しい場所」「新しい出会い」

何でもいいのです。挑戦した数が、人生の充実度を測る指標になります。

山田先生の「幸せKPIシート」

私は、山田先生と一緒に、**「幸せKPIシート」**を作りました。

毎月末に、4つのKPIを5段階で評価するシートです。

【1ヶ月目】
笑顔:★★☆☆☆(2点)
健康:★★★☆☆(3点)
感謝:★☆☆☆☆(1点)
挑戦:★☆☆☆☆(1点)
合計:7点/20点

山田先生は、愕然としました。

「これが、私の現状なんですね…」

でも、ここからが始まりです。

「来月は、10点を目指しましょう。そのために、何をしますか?」

山田先生は、考え込みました。

そして、こう宣言しました。

「孫に会いに行きます。地域のボランティアに参加します。それと、ずっとやりたかった陶芸教室に通います」

3ヶ月後、山田先生は変わった

3ヶ月後。

山田先生の幸せKPIシートは、こうなっていました。

【3ヶ月目】
笑顔:★★★★☆(4点)
健康:★★★★☆(4点)
感謝:★★★★☆(4点)
挑戦:★★★★★(5点)
合計:17点/20点

「先生、毎日が楽しいんです。孫と遊んだり、陶芸でお茶碗を作ったり。ボランティアで地域の人と話したり」

そして、驚くべきことを言いました。

「不思議なんですが、資産額を気にしなくなりました。いや、運用はちゃんと続けていますよ。でも、毎日株価をチェックすることはなくなりました」

お金以外のKPIを持ったことで、お金への執着が消えたのです。

資産残高より「満足感の残高」を測る

私たちは、資産残高を毎月チェックします。

「今月は〇〇万円増えた」「減った」

でも、満足感の残高は測らないのです。

これからは、両方を測りましょう。

通帳に記録されるのは、お金の残高。
心に記録されるのは、満足感の残高。

そして、心の残高が増えることこそ、本当の豊かさなのです。

「幸せKPI」の具体的な使い方

では、どうやって幸せKPIを日常に取り入れるのか?

3つの方法をご紹介します。

方法①:月末に10分だけ振り返る

毎月末、カレンダーを見ながら振り返ります。

「今月、一番笑ったのはいつだったかな?」
「健康のために何かしたかな?」
「誰に感謝を伝えたかな?」
「新しいことに挑戦したかな?」

それをノートに書き、5段階で評価します。

方法②:次月の目標を1つだけ決める

「来月は、孫に会いに行く(笑顔+2点)」
「来月は、週2回ウォーキングする(健康+1点)」
「来月は、妻に感謝の手紙を書く(感謝+1点)」
「来月は、俳句教室に通い始める(挑戦+2点)」

目標は1つでいいのです。確実にできることを。

方法③:家族と共有する

夫婦で、お互いの幸せKPIを共有するのも素敵です。

「今月のあなたの挑戦点は5点ね! すごい!」
「あなたは笑顔が少ないわ。来月は一緒に旅行に行きましょう」

こうして、お金の話ではなく、幸せの話ができる関係になります。

数字ではなく、感情をマネジメントする時代

人生前半は、数字(収入・貯蓄)をマネジメントする時代でした。

でも、人生後半は、感情(笑顔・健康・感謝・挑戦)をマネジメントする時代です。

もちろん、お金の管理も大切です。

でも、お金は手段であって、目的ではありません。

**本当の目的は、「幸せに生きること」**なのです。

次回予告:家族との「お金の会話」

次回の第7話では、**「家族と”お金の会話”を始めよう」**をテーマにお話しします。

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〜相続・介護の話を”未来のプレゼント”に変える方法〜

エンディングノートではなく、”生きるノート”を作る。
家族の絆を深めるお金の共有文化をお伝えします。

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■昭和42年2月13日生 ■出身:群馬県伊勢崎市 ■住まい:群馬県高崎市 ■趣味:Audi A5でのドライブ・映画鑑賞・都市伝説・クレー射撃・狩猟 ■保有資格 ・証券外務員一種 ・投資診断士 ・相続診断士 ・二級ファイナンシャルプランニング技能士 ・AFP(日本ファイナンシャル・プランナー協会) ・福祉住環境コーディネーター