第2話「”お金の心配”から解放される3つの安心資産」

続・教員・公務員のための「人生100年・第二の人生を豊かにする10話シリーズ」

「不安」の正体を見つめる

前回ご紹介した田中先生は、週1回の公民館講師という「選べる働き方」を手に入れました。

しかし、実は田中先生にも、退職直後に大きな不安がありました。

「年金だけで、本当に生活していけるのだろうか…」

退職金2,500万円、預金500万円、合計3,000万円の資産。そして月額22万円の年金。

数字だけ見れば決して少なくありません。でも、心のどこかに「足りないかもしれない」という不安が消えませんでした。

多くの教員・公務員OBの方が、同じ不安を抱えています。

「人生100年時代、お金は足りるのか?」

でも実は、この不安の多くは、お金の”役割”を決めていないことから生まれているのです。

3,000万円は「多い」のか「少ない」のか?

田中先生がIFAの私のもとを訪れたとき、こう尋ねました。

「先生、私の3,000万円は、足りますか?」

私は逆に質問しました。

「田中さん、その3,000万円に、何をしてほしいのですか?」

田中先生は戸惑った表情で答えました。

「それは…老後の生活費に、ですよね?」

「すべてをですか? それとも年金の不足分だけですか? 旅行や趣味のお金は別ですか? 病気になったときの備えは? お孫さんへのプレゼントは?」

質問を重ねるうちに、田中先生の表情が変わりました。

「あ…私、全部ごちゃ混ぜに考えていました」

そうなのです。多くの方が、資産を「ひとつの塊」として見ています。

だから不安になるのです。

お金に”名前”をつける ─ 3つの安心資産

私は田中先生に、こうご提案しました。

「3,000万円を、3つの”役割”に分けてみませんか?」

①生活防衛資金:500万円
②長期運用資金:2,000万円
③楽しみ資金:500万円

この瞬間、田中先生の表情が明るくなりました。

「なるほど…お金に”仕事”をさせるんですね」

①生活防衛資金 ─ 心の安定装置

生活防衛資金とは、「いざというとき」のためのお金です。

急な医療費、家の修繕、想定外の支出。人生には、予期せぬ出費がつきものです。

田中先生の場合、月の生活費が25万円ですから、2年分として500万円を確保しました。

この500万円は、すぐに引き出せる普通預金に置いておきます。

「え? 運用しなくていいんですか?」

田中先生は驚きました。

「はい、この500万円の仕事は、『増やすこと』ではなく『守ること』『安心させること』です。利息はほぼゼロでも、それでいいんです」

この発想の転換が、とても大切なのです。

すべてのお金を増やそうとするから、不安になる。

生活防衛資金は、心の安定装置なのです。

②長期運用資金 ─ 人生を支え続けるエンジン

次に、最も重要な2,000万円です。

この2,000万円の仕事は、**「運用しながら取り崩す」**ことです。

「運用しながら…取り崩す? 矛盾していませんか?」

田中先生の疑問は、ごもっともです。

多くの方が、「退職したら運用は終わり。あとは取り崩すだけ」と考えています。

でも、それは大きな誤解なのです。

なぜ「運用しながら取り崩す」のか?

人生100年時代、60歳で退職しても、あと30年、40年と続きます。

もし2,000万円を運用せずに、毎月10万円ずつ取り崩したら…

16年8ヶ月で資産がゼロになります。

75歳です。平均寿命まで、まだ10年以上あります。

では、どうすればいいのか?

答えは、「取り崩しながらも運用を続ける」ことです。

年4%で運用しながら、毎月10万円を取り崩した場合、2,000万円は…

30年後も1,200万円以上残っています。

これが、**「取り崩し運用」**の力なのです。

債券ではなく、株式中心で

ここで、重要なポイントがあります。

従来の常識では、「退職したら安全な債券へシフトしましょう」と言われてきました。

しかし、IFAとして数百人の資産寿命を見てきた経験から、私は断言します。

債券中心の運用は、資産寿命を縮めます。

なぜか?

債券の期待リターンは、せいぜい年1〜2%程度です。

年1%で運用しながら月10万円取り崩すと、2,000万円は25年でほぼゼロになります。

一方、質の高いアクティブファンドで株式中心に運用すれば、年4〜6%のリターンが期待できます。

年5%なら、月10万円取り崩しても、資産は40年以上持続します。

「でも、株式は危険じゃないですか?」

田中先生の不安、よくわかります。

でも、本当に危険なのは、債券で”安心したつもり”になって、資産寿命が尽きることです。

長期で見れば、質の高い株式ファンドこそが、最も確実に資産寿命を延ばします。

優良なアクティブファンドという選択

ここで、もうひとつ重要なポイントがあります。

「インデックスファンドが良いと聞きましたが?」

多くの方がそう思われています。

しかし、インデックスファンドには限界があります。

インデックスは、市場全体の平均です。つまり、成長企業も衰退企業も、すべて含まれます。

一方、優良なアクティブファンドは、成長する企業だけを厳選して投資します。

例えば、過去15年のデータを見ると、優良アクティブファンドはインデックスを年率2〜3%上回っています。

これは、30年の取り崩し期間では、資産残高に1,000万円以上の差が生まれます。

IFAだからこそ、世界中の優良ファンド・マネージャーから最適なものを選べる。

これが、銀行や証券会社にはできない、独立系アドバイザーの強みなのです。

③楽しみ資金 ─ 人生を彩るお金

最後の500万円は、**「楽しみ資金」**です。

これは、旅行、趣味、孫へのプレゼント、ちょっと贅沢な外食…

人生を彩るためのお金です。

「この500万円は、使い切っていいんです」

私がそう言うと、田中先生は目を丸くしました。

「使い切って…いいんですか?」

「はい。10年で使い切るなら、年50万円。月4万円です。これを、心から楽しむことに使ってください」

多くの方が、「もったいない」と言って、お金を使えません。

でも、**使わないまま人生を終えることこそ、”もったいない人生”**なのです。

楽しみ資金は、運用する必要はありません。

普通預金で十分です。いつでも好きなときに使えることが、何より大切なのですから。

3つに分けたら、不安が消えた

田中先生は、資産を3つに分けてから、表情が変わりました。

「なんだか、急に気持ちが楽になりました。3,000万円という数字は変わっていないのに、不思議ですね」

それは、お金に役割を与えたからです。

500万円は、心を守る。
2,000万円は、人生を支える。
500万円は、人生を彩る。

それぞれが、それぞれの「仕事」をする。

だから、安心できるのです。

あなたも、お金に”名前”をつけてみませんか?

このように、資産を3つに分ける。それだけで、不安は大きく軽減されます。

そして、次回の第3話では、さらに踏み込んで、**「人生を彩る”使うための投資”」**についてお話しします。

投資は、増やすだけが目的ではありません。

人生を豊かにする道具なのです。


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次回予告
第3話「人生を彩る”使うための投資”とは?」
〜旅行・趣味・学び・寄付…お金の出口戦略が幸福度を決める〜

資産は「貯める」ものから「使う」ものへ。
人生後半の新しいマネー哲学をお伝えします。

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■昭和42年2月13日生 ■出身:群馬県伊勢崎市 ■住まい:群馬県高崎市 ■趣味:Audi A5でのドライブ・映画鑑賞・都市伝説・クレー射撃・狩猟 ■保有資格 ・証券外務員一種 ・投資診断士 ・相続診断士 ・二級ファイナンシャルプランニング技能士 ・AFP(日本ファイナンシャル・プランナー協会) ・福祉住環境コーディネーター