教員・公務員のための「人生100年・資産寿命を延ばす10話シリーズ

「繰下げ受給すれば得をする」は本当か?
「年金は繰り下げた方が得だと聞いた。75歳まで繰り下げれば、受給額が84%も増えるんでしょ?」
確かに、年金の繰下げ受給には大きなメリットがあります。65歳から受け取る場合に比べて:
- 70歳開始:42%増額
- 75歳開始:84%増額
しかし、繰り下げることで必ずしも”得”をするとは限りません。
なぜなら、年金収入が増えれば、それに連動して税金と社会保険料も増えるからです。
年金収入が増えると、何が起こるか
増える税金
年金収入は「雑所得」として課税されます。公的年金等控除があるため、一定額までは非課税ですが、受給額が増えれば課税所得も増えます。
65歳以上の公的年金等控除:
- 年金収入330万円以下:110万円の控除
- 年金収入330万円超410万円以下:控除額が段階的に減少
例えば、夫婦で年金月20万円(年240万円)なら、ほぼ非課税です。しかし、繰下げで月30万円(年360万円)になると、約25万円が課税所得となり、所得税・住民税が発生します。
増える社会保険料
さらに深刻なのが、介護保険料と後期高齢者医療保険料の増加です。
介護保険料(65歳以上)
- 年金収入が多いほど、保険料が上がる(段階制)
- 最低段階(生活保護レベル):年約2万円
- 最高段階(年金収入400万円以上):年約15万円以上
後期高齢者医療保険料(75歳以上)
- 年金収入に応じて保険料が変動
- 年金月20万円の場合:年約10万円
- 年金月30万円の場合:年約18万円
つまり、年金を繰り下げて受給額を増やすと、税金と社会保険料の負担も大幅に増えるのです。

繰下げで”損”をするケース
具体例を見てみましょう。
Aさん(夫婦):65歳から年金月20万円を受給
- 年金収入:年240万円
- 税金:ほぼゼロ
- 社会保険料:年約12万円
- 手取り:年約228万円
Bさん(夫婦):70歳から繰下げ受給で月28.4万円
- 年金収入:年340.8万円(42%増)
- 税金:年約5万円
- 社会保険料:年約20万円
- 手取り:年約315.8万円
一見すると、Bさんの方が年間約88万円多く手取りが増えています。しかし、65〜70歳の5年間、Aさんは年240万円×5年=1,200万円を受け取っています。
この1,200万円を運用しながら生活に使えることを考えると、必ずしも繰下げが得とは限らないのです。
さらに、もし75歳で亡くなった場合、Bさんは5年間(年340.8万円×5年=約1,704万円)しか受け取れず、Aさんは10年間(年240万円×10年=2,400万円)受け取れます。
年金繰下げより、退職金運用の方が合理的な理由
年金を繰り下げるより、65歳から年金を受け取り、退職金を運用して資産寿命を延ばす方が合理的な場合が多いのです。
シミュレーション比較
パターンA:65歳から年金受給+退職金運用
- 年金:月20万円(年240万円)
- 退職金2,000万円を運用(年利3%)
- 毎年80万円ずつ取り崩し
- 30年後の退職金残高:約1,600万円
パターンB:70歳まで繰下げ+退職金取り崩しのみ
- 65〜70歳:退職金から月20万円取り崩し(5年で1,200万円)
- 70歳以降:年金月28.4万円+退職金残り800万円を取り崩し
- 30年後の退職金残高:ゼロ(85歳で尽きる)
結果:パターンAの方が、30年後に1,600万円の資産が残る

DCやNISAを活用して”課税を抑えながら取り崩す”方法
ここで重要になるのが、税制優遇制度を活かした取り崩し戦略です。
iDeCoの取り崩し方
iDeCoで積み立てた資産は、60歳以降に受け取ることができます。受け取り方は3つ:
- 一時金で受け取る:退職所得控除が適用される
- 年金で受け取る:公的年金等控除が適用される
- 一時金と年金を併用:両方の控除を使える
最も節税効果が高い方法は「併用」です。
例えば、iDeCo資産が400万円ある場合:
- 一時金で200万円を受け取る(退職所得控除内で非課税)
- 残り200万円を年金形式で10年間受け取る(年20万円、公的年金等控除内で非課税)
こうすることで、ほぼ無税で受け取れます。
NISAの取り崩し戦略
NISAで運用している資産は、いつ売却しても非課税です。これを活かして:
- 65〜74歳:年金+iDeCo取り崩し
- 75〜84歳:年金+NISA取り崩し
- 85歳以降:年金+退職金運用資産取り崩し
このように、税制優遇制度を時期ごとに使い分けることで、税負担を最小限に抑えられます。
65歳以降にこそ必要な「出口戦略」
多くの方が、「資産形成(積立)」には関心を持ちますが、「出口戦略(取り崩し)」を軽視しがちです。
しかし、老後において最も重要なのは、”いかに賢く取り崩すか”です。
出口戦略の5つのポイント
- 年金は基本的に65歳から受給
繰下げによる増額よりも、早期受給+運用の方が資産寿命が長い - iDeCoは一時金と年金を併用
両方の控除を最大限に活用し、税負担を減らす - NISAを活用して非課税で取り崩す
運用益が非課税なので、生活費の補填に最適 - 年金収入を増やしすぎない
社会保険料の負担増を避けるため、年金収入は適度に抑える - 退職金は全額を一度に取り崩さない
運用しながら少しずつ取り崩すことで、資産寿命を延ばす
50代の教員・公務員へ ― 今から出口戦略を学ぶ
50代の方は、まだ年金受給まで時間があります。だからこそ、今のうちに出口戦略を学んでおくことが重要です。
- ねんきん定期便で年金額を確認
65歳、70歳、75歳で受け取る場合の金額を比較する - iDeCoの受け取り方を調べる
一時金・年金・併用のそれぞれの税負担をシミュレーション - NISAを今から始める
将来の非課税取り崩し枠を確保しておく
60代で年金受給を控えている方へ ― 受給開始時期を決める
60歳で定年退職し、65歳の年金受給開始を控えている方。
基本的には65歳から受給開始することをお勧めします。
理由:
- 繰下げのメリットは、税金・社会保険料の増加で相殺される
- 早期受給+運用の方が、資産寿命が長い
- 健康リスク(もし早く亡くなった場合の損失)を避けられる
既に年金を受給している方へ ― 取り崩し順序を見直す
既に年金を受給し始めている方も、取り崩し順序を見直すことで、税負担を減らせます。
最適な取り崩し順序:
- iDeCo一時金(退職所得控除内で非課税)
- NISA資産(運用益非課税)
- 特定口座の投資信託(損益通算で節税)
- 定期預金(最後に取り崩す)
この順序で取り崩すことで、税負担を最小化できます。

まとめ ― 受け取り方を工夫すれば、手取りが大きく変わる
年金、税金、社会保険――これらは複雑に絡み合っています。
しかし、その仕組みを理解し、賢く受け取り方を工夫すれば、手取り額を大きく増やすことができます。
- 年金の繰下げは必ずしも得ではない
- iDeCoは一時金と年金の併用で節税
- NISAを活用して非課税で取り崩す
- 年金収入を増やしすぎて、社会保険料を増やさない
老後の資産設計は、”いくら持っているか”ではなく、”どう受け取るか”が勝負です。
次回は、「お金を”見える化”する ― 老後キャッシュフローの設計術」をテーマに、具体的な資産管理の方法をお伝えします。
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