
その日、私の希望は音を立てて崩れました
65歳の誕生日。待ちに待った年金支給日
朝から何度も通帳を確認していました。 「ついに年金がもらえる日が来た」
40年間、毎月欠かさず払い続けた年金保険料。 「月15万円もらえるなら、なんとかやっていける」 そう計算して、安心していたのです。
午後2時。 銀行のATMで残高を確認した時のことを、 私は一生忘れることができません。
「121,847円」
画面に映し出された数字を見て、思わず息が止まりました。
「え?15万円のはずなのに…機械の故障?」
あの日の衝撃は、今も胸に刺さっています
ATMの前で立ち尽くしていた私に、 銀行員の方が優しく声をかけてくれました。
「年金には税金や保険料がかかりますので、 手取りはどうしても少なくなってしまうんです」
その瞬間、頭が真っ白になりました。
「そんな話、聞いてない…」
家に帰って年金の通知書を見直すと、 確かに小さく「控除」という文字が並んでいました。
所得税、住民税、健康保険料、介護保険料…
「こんなにたくさん引かれるなんて、知らなかった」
その夜、私は一人で泣きました
夫には言えませんでした。 「15万円もらえるから大丈夫」と言ってしまった手前、 「実は12万円しかもらえない」なんて口にできなくて。
台所でお茶碗を洗いながら、 涙がポロポロと落ちました。
「これからどうやって生活していけばいいの?」 「老後の計画が全部狂ってしまう…」
あの夜ほど、不安で眠れなかった夜はありません。
佐々木さんの絶望と立ち直り
同じような経験をしたのは、私だけではありませんでした。
前橋市に住む佐々木さん(67歳)も、 年金の手取り額に愕然とした一人です。
「18万円の年金のはずが、手取り15万円。 妻のパート代6万円と合わせて21万円。 生活費は25万円かかるのに…」
佐々木さんは、しばらく家に引きこもってしまいました。 「だまされた気分だった」と、当時を振り返ります。
でも、ある日のこと。 家計簿を妻と一緒に見直してみると、発見がありました。
「案外、削れる支出があるじゃないか」
絶望の向こうに見えた小さな光
携帯電話の料金、ほとんど見ない新聞の購読、 使っていない保険…
一つずつ見直していくと、 月3万円の節約ができることがわかりました。
そして佐々木さんは、地元のホームセンターで 週2日だけ働くことにしたのです。
「お客さんから”ありがとう”と言われるたびに、 まだ社会の役に立てるんだと実感できる。
月2万円の収入だけど、気持ちはプライスレス。 手取り15万円でも、こんなに豊かに暮らせるなんて」
あなたも騙されていませんか?「額面の罠」
テレビや雑誌で見る年金の話。 ほとんどが「額面」で語られています。
「夫婦で月22万円の年金」 「平均的な年金額は月14万円」
でも実際に生活に使えるのは、そこから税金や保険料を引いた「手取り」です。
この「額面の罠」に、多くの人が落ちています。
「こんなはずじゃなかった」 「話が違う」 「年金制度は信用できない」
そんな気持ちになるのも、無理はありません。
真実を知ることの痛みと希望
確かに、手取り額を知った時のショックは大きいものです。
でも考えてみてください。
その税金や保険料は、どこに使われているのでしょうか?
あなたが病気になった時の医療費。 介護が必要になった時のサービス。 次の世代の子どもたちの未来。
あなたが払っている一円一円が、誰かの命を支えているのです。
田中さんが見つけた「新しい幸せの形」
高崎市の田中さん(66歳)は、こう話してくれました。
「最初は手取りの少なさにがっかりした。 でも、よく考えてみると…
健康保険があるから、病気になっても安心。 介護保険があるから、将来も不安じゃない。
手取りは減るけど、その分”安心”を買ってるんだと思ったら、 気持ちが楽になった」
田中さんは今、近所の子どもたちに勉強を教えるボランティアをしています。
「お金は少ないけど、心は豊か。 これが私の新しい幸せの形です」
今からでも間に合う「手取りベース人生設計」
もしあなたが、まだ年金を受け取っていないなら。 今すぐにでも「手取りベース」で人生設計を見直してください。
年金ネットや年金事務所で、 実際の手取り額をシミュレーションできます。
「知らなかった」の後悔よりも、 「知っていた」の安心を選んでください。
そしてもし、手取り額に不安を感じたなら:
- 支出の見直し
- 副収入の検討
- 貯蓄の活用
この3つの武器があなたを守ってくれます。
絶望から希望へ。私たちの物語は続く
あの日、ATMの前で呆然としていた私。 今では、手取り12万円の生活を楽しんでいます。
無駄な支出を削り、 週3日だけパートで働き、 夫と二人、質素でも幸せな毎日を送っています。
「足りない」と嘆くよりも、 「あるものでどう幸せになるか」を考える。
それが、私たちの新しい生き方です。
あなたへの愛のメッセージ
年金の手取り額を知った時の衝撃。 その気持ち、痛いほどわかります。
でも、それで人生が終わるわけではありません。
むしろ、そこからが新しいスタートです。
本当の豊かさは、銀行口座の残高では測れません。
あなたが積み重ねてきた経験、 培ってきた人間関係、 そして何より、まだ見ぬ明日への希望。
それらすべてが、あなたの真の「資産」なのです。
手を取り合って歩いていこう
一人で悩む必要はありません。 同じような思いをした仲間が、たくさんいます。
地域の年金相談窓口、 近所の人生の先輩たち、 そして何より、あなたを愛する家族。
みんなで支え合えば、どんな困難も乗り越えられます。
年金の「落とし穴」は確かに存在します。 でも、それを知って備えれば、 もう落ちることはありません。
次回:愛が紡ぐもう一つの年金物語
次回の第8話では、 家族への最後の贈り物、 「遺族年金・障害年金というもうひとつの支え」 について、心温まるエピソードと共にお伝えします。
それは、愛する人を守るための、 もう一つの年金の物語です。
